日本時間10/28(土)の23:00にホームでリーグ第10節シェフィールド・U戦が行われました。結果は5ー0の完勝でしたが、前半は相手が引いていて、スペースを消していた為攻めあぐねてしまい、過去のアーセナルの試合がフラッシュバックして、カウンター1本でやられてしまうのではと不安になりましたが、結果的にはエディのハットトリック、ファビオのPK、トミーのアーセナル移籍後初ゴールで、多くの話題が生まれたので、私の不安が杞憂に終わってホッとしました。
ただ、私の中で今節一番のトピックは、アカデミー出身の背番号「10」エミール・スミス・ロウの久々のスタメン出場です。昨年はシーズン序盤に、慢性的に悩まされてきた股関節の手術を受けたため復帰したのはシーズンの中盤以降でした。戻ってきた時はチームの状態も良かったため、なかなかスタメンでの出場ができない状況でしたが、個人的にはコンディションの問題もあるので、無理に試合に出ずに、しっかりとコンディションを整えてチャンスを待つという意味では、出場数が少ないのは決して悪いことだけではないと思っていました。過去には怪我明けですぐに復帰して、数試合したらまた怪我をするという悪習がアーセナルには存在したので、彼が休んでいても、チームが勝てるほど選手層が厚くなったことに関しては本当に感慨深く、本当にこれがあのアーセナルなのかと疑いたくなります。しかし、選手層が厚くなったことは、ゆっくり怪我と向きあう時間ができる反面、苛烈なスタメン争いがあるということでもあり、今シーズンが始まっても、ベンチにいることが多く、最近は他チームへの移籍の噂も出てきているので少し心配です。もちろん彼よりもコンディションがよく、実力もあり、スタメンになっている選手には依存はありません。彼だけを特別に思っているわけではないのですが、トップチームに上がった直後から彼のプレーをみてきた者としては、自分との年の差も相まって、我が子のような感覚です。(他にもブカヨ、エディ、リース、ユース出身ではないですがマルティネッリにも同じ感情があります)
2年前にニューカッスルに移籍したジョー・ウィロックの時も寂しさを感じましたが、全てのユース出身者がトップチームにスタメンとして出場できるわけではないですし、彼らも自分のキャリアを考え、スタメンで出場しやすいチームに行くのは自己の成長の為にも必要なことであるのは私も理解しています。しかし、エミールは現在のアーセナルにおいて、誰よりもアーセナルのスタイルを表現してくれる選手だと思います。ですから、アーセナルで大成してほしいとずっと願っているのです。
エミールのプレイを初めてみたのは、監督がウナイ・エメリ時代の2018年のプレシーズンのハイライト動画でした。ハイライトなのでフルサイズで試合を見ることはできなかったのですが、ハイライトだけでもセンスが際立っていたため、メスト・エジル以来のワクワク感のある選手だと直感しました。その後いくつかのレンタル移籍をしましたが、彼がドイツのライプツィ匕にレンタルで在籍している頃、ライプツィ匕がその才能に惚れ込み、何とかして獲得しようとした所、アーセナルが拒否したという話もありました。その後、2020年12月のチェルシー戦でスタメンに選ばれると、ブカヨやラカゼットと美しい連携を見せ、チェルシーに勝ち、当時就任して、なかなか波に乗れなかったミケルのチームを救ったのは今でも忘れません。彼がボールを持つとチームが動くのです。そのシーズンのそれまでのアーセナルのプレー内容は、過渡期の真っ只中とはいえ、正直退屈そのもので、ミケルの試行錯誤も虚しく、無機質な試合ばかりでした。そんな中、エミールがスタメンで出場しボールを持つと、チームが「有機的」になったのです。表現として伝わりずらいと思いますが、感じたのはそんな言葉でした。
当時在籍していたメスト・エジルもすばらしい選手でしたが、彼の場合はチームの連動の中で生きるというよりも、彼のビジョンの中で生きている感覚があり、エミールはメストよりも、セスクやロシツキー、ウィルシャー寄りの選手だと感じました。最初にあげた2名の選手は、私が見始めた頃のアーセナルの選手達で、周囲と連携することで相手を崩していく、そのプレイスタイルは本当に見事としかいえませんでした。その当時はペップ率いるバルセロナが全盛期でしたので、プレイスタイルも似ていることから、バルセロナの二番煎じだと揶揄されていました。でもバルセロナにはメッシやシャビなど、カンテラ出身の選手もいましたが、選手の獲得に、お金も結構使っていました。アーセナルはスタジアム建設に伴う緊縮財政の為に、限られた予算内で若い選手を獲得しながら、そのスタイルを表現していました。どっちが正しいとかではありませんが、あの時にメディアで言われた「二番煎じ」という言葉には今でも憤りを覚えています。
少し話が逸れましたが、エミールにはその頃のアーセナルの選手たちの魂を感じます。エミールとは少しタイプが違いますが、現在のチームの司令塔であるマルティン・ウーデゴールもスキルと献身性があり、パスのセンスも申し分ありません。過渡期にあったアーセナルに、レアルから移籍してきてくれたことは、メストの時と同様感謝しかありません。エミールはマルティンよりもセスクやロシツキー、ウィルシャー寄りです。彼らよりも守備の献身性もあるので、非常にモダンな選手だと思います。彼だけを特別にみているわけではないと言いましたが、少し嘘も入っています。古き良きアーセナルを感じさせてくれるエミールには本当に期待しています。今は困難な時期かもしれませんが、彼なら乗り越えてくれると信じています。なにより他のチームで輝いている彼を見るのは嫌です。彼はアーセナルで輝いてほしい選手なのです。
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