アーロン・ラムズデールは昨年までアーセナルの不動のGKであり、背番号は「1」。それが今季から新加入したダビド・ラヤにポジションを奪われ、現在はベンチに座っています。ここ数年はラムズデールが守護神としてスタメン起用されていたので、この光景に慣れるのに少し時間が掛かりました。
もちろんラヤは素晴らしいGKです。昨年までのスタッツを比較すると、ほとんどの項目でラムズデールを上回っています。スタメンで起用されていることに関してもなんら依存はないですし、我がアーセナルに加入してくれた選手に対しては、無償の愛とサポートを提供します。例えパフォーマンスが悪くても、選手も人なので、たった数試合で全てを判断することはありません。同じく今季新加入のカイ・ハヴァーツに関しても、今はチームへの適応が遅れていたり、調子自体が上がっていないようですが、高額な移籍金で加入した影響で批判されることが多いです。でも彼は試合中に守備も献身的に行い、サボることはありません。また身長が高いので、ハイボールを収めてくれます。アーセナルのFW陣はテクニックやフィジカル、献身性に優れていますが、高身長では無いため、カイみたいなタイプは貴重です。彼自身も本来はFWではなく、中盤がメインの選手だとは思いますが、与えられたポジションで真摯にプレイする姿勢は本当に応援したくなります。チームに適応すれば、年間で公式戦20ゴールはとってくれると期待しています。
私はサッカー経験者でも、戦術を理解しているわけでもありません。元々、当時のJリーガーがチャラチャラしている印象があったので嫌いな競技でした。それが2002年の日韓ワールドカップのドイツ代表を観て、サッカーの魅力に取り憑かれ、2006年からは一貫してアーセナルを応援しています。ほぼ「見る専門」のグーナー歴17年間のただの男です。
私も多くの日本人同様、アーセン・ヴェンゲルが監督の時代に、その「美しく、儚い」プレーに心を奪われてしまった1人です。パスやポジションチェンジを織り交ぜながら、いつでも点が取れる雰囲気があり、それを20才前後の若い選手たちで構成されたチームが見せてくれるのです。本当に「美しい」のですが、同時に若い選手達にはまだ経験が無いため、4点も先制したのに、なぜか4点取り返されて引き分けになるなど脆さもあり、それが私の感じた「儚さ」でした。でも、何故かそれがとても魅力的に感じるチームでした。
17年間もの間、数多くの選手達が加入・退団してきましたし、ポジション争いは常にあったので、話は戻りますが、アーロンの件もいつもと同じプロの宿命だと言えます。でも現在のアーセナルは毎年タイトル争いができるような強豪チームに戻る過程の中にあり、アーロンは3年前に加入し、彼の活躍もあり、昨年やっとチャンピオンズリーグの権利のあるリーグ2位になることができました。明るい性格で私以外にも彼のファンは多いと思います。まだ25才でGKとしても非常に若く、イングランド代表にも選ばれるほどの選手です。時折不安定なプレーがありますが、若い選手にはつきものです。最初から完成されている選手はほとんどいませんが、時折見せる、その才能を感じさせるプレーに未来を感じるのが楽しく、若い選手を応援する魅力でもあります。アーロンもまだまだこれからの選手です。
ですので、今回彼がポジションを失った事に関しては、正直寂しさと疑問を感じました。今季ここまでのアーセナルには去年までのワクワクさと強さは感じません。9節終了時点でまだ無敗ですが、内容は去年と比較してお世辞にも良くないです。去年はチームのピークが早かったので、単純に今季と比べることはできませんし、去年はほとんどの期間、首位でしたが、最後で力尽き、シティに抜かれてしまいました。もしかしたら今季は、昨季と同じ轍は踏まないように、ピーク時期を去年とは違うタイミングに調整しているのかもしれません。実際にシティのピークはいつも後半になるので、ペップの元で学んでいたミケルなら、どこか師匠と同じ考えがあってもおかしくはないです。それに今季はCLもあるので、コンディションの維持は去年よりも難しくなっているはずです。
何より、昨季強かった時はラムズデールが正GKでした。確かにパス精度などのスタッツはラヤの方が上ですし、不動のレギュラーだったジャカが退団し、デクラン・ライスなど新加入のメンバーもいるのでで、当時と同じ状況ではありません。デクランがチームに完全にフィットする時間も必要ですし、彼が加入したことでジャカの時とは違う、新しいバランスを見出さなければいけません。
多くのエクスキューズがあるにせよ、現状のチームのパフォーマンスでは、スタッツやチームの目指すスタイルが理由でラムズデールがスタメンから外れていることには100%の同意は難しい状況です。
あと何試合で優勝を目指すチームとして仕上げる予定なのかは、ミケルしか知りませんが、ワクワクを感じられる状態になるにはしばらく時間がかかりそうな予感がします。アーロンが現在の状況の中で不貞腐れることはないと思いますが、彼がスタメンを勝ち取った時も前任のベルント・レノが開幕から失点を重ねた時でした。今でもあれはレノだけのせいではないと思っていますが、それぐらいの理由がないとスタメン交代のチャンスが無い、GKというポジションの無情さを感じます。
アーロンにもきっとチャンスは来ると思いますし、ただでさえ試合数が多い今季は、全ての試合を1名のGKで乗り越えるのは無理です。ラヤも応援しますが、アーロンも心から応援しています。難しい願いだと思いますが、2名が絶妙なバランスで試合数を分け合うことができたら、優秀なGKが2名いることの恩恵がチームに還元されると思います。前例はないのですが、今シーズンのミケルの2名のGKに対するマネジメントにも注目していきたいと思います。
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